機動戦士ガンダムSEED DESTINY 第34話

 前作における「キラVSアスラン(ガチンコ)」にあたる、番組開始当初から中盤の山場としてその存在が暗示され、そして、まあ平均的な視聴者が一番期待していたであろう展開である「シンVSキラ」そして「インパルスVSフリーダム」の回。


 え、もうやっちゃうの? という気が一瞬したものの、気付けばそろそろ全話数の四分の三に達しようとしているわけで、どちらかというと遅いのである。ステラの死亡の回の、たった二話後というのが、なんだか慌しい印象を与えるのかもしれない。OP映像で予告されているエピソードの幾つも(デストロイに対し、キラ、シン共闘。マリュー、仮面を外したネオと相対)が、この三話ぐらいで立て続けに消化されているのは、やはりシリーズ構成の不備なのだろうか。


 前回の予告で、また例の抽象的な表現ながらも、はっきりと勝敗が決するようなことを言っていたので、そうかそうか、やっとこれでシンが敗北の味を知るのだなとすっかり思い込んでいた。なに勝ってるんだよ、シン。しかもあんな少年漫画的な、敵の戦法を親友と共に分析して見出した作戦で。いや、怨念だけで勝たれるよりはいいんだけど。まあこんな敵の弱みに付け込む(キラの自業自得なんだが)勝ち方だと、復活したキラ&ストライクフリーダムに瞬殺される羽目になりそう。それとも、次の対戦はもう最終決戦になるのか。


 主人公機としては最後のお勤めということで、インパルス大活躍。チェストフライヤーぶつけたり(Vガンを意識、したかどうかは知らないが、こちらとしては否応無く思い出す)、シルエット使い切る勢いで換装しまくったり。SEEDにごく稀にある、こういうアクションの光る回がすごく好きだ。前作での砂漠の虎編の前後とか。全体から見ると浮いてるんだが。余談だが、どうせ二回換装するんだったら、全シルエットを登場させればいいのに。特にブラストなんて、アビスを殺った時ぐらいしか使ってないんだから。まあ、フォースインパルスでソードを使うという妙に格好いい姿が見れたのでいいけど。でも、あんなマネが出来るなら、各シルエットに換装する意味が薄れる気が。


 いくら便利だからって、シン暴走顔にあのバンクを使い続けるのはいただけない。


 戦闘シーン中にフラッシュバックするシーンの中に、シンの妹のものがないのが、多少気になった。シンが、キラ及びフリーダムに対して敵意を抱く理由としては、ステラのことが最重要というか唯一のものになり、妹のエピソードは無効化された? 前々回のラストで、ステラの死と妹の死を重ねていたので、ステラについての恨みが妹のそれを兼ねるということ? 深い理由はないのかもしれないが。


 どうやらネオが、アークエンジェルに乗艦していた記憶を持っているご様子。ということはクローンの類ではなくフラガ本人なのか。さーて、ローエングリン直撃して宇宙空間で生きてた理由を、どうやって説明するのか楽しみ。


 DESTINYが、表面的なものであるにせよ、Zをなぞっているというのは誰が見ても(ちゃんとZを見たことがない俺でさえも)一目瞭然なのだが、それ以上に最近の展開は前作のそれを踏襲している印象が強い。「キラ、ステラを殺害→キラとシン、決定的に対立」という構図は、前作の「キラ、ニコルを殺害→キラとアスラン、決定的に対立」とほぼ相似であると言える(ニコルとステラの、作中での重要度にやや差があるが)。直後の対決の結果、行方不明になるのが、キラであるところまで一緒。そうなると、やはり以後描かれることになるのは、キラとシンの和解なのだろうか。それをするにしても、シンが極端に罪を犯しすぎている(オーブ軍艦ジェノサイド等)のは明らかで、何らかの罰というか贖罪的な段階を経る必要があるだろう。もっとも、前作で友人の彼女を寝取るという大罪を犯したキラが、それについては最後まで謝罪の一つも口にしなかったことを考えると、何の理由もなく突然更正して聖人みたいになったシンが見られるのかも知れない。



 雪の日の帰り道。
 隣では同級生の少女が、手袋をしてくればよかったと愚痴りながら、自分の両手に息を吹きかけている。
 その様子を見詰める僕の視線に気付いたのか、彼女は僕の方を振り返った。
「なんでもない」
 急いで目を逸らしながら、質問を先回りして僕は答えた。
「なんでもないの?」
 問い詰めるというよりは、確認するように彼女が言った。僕は口を開かずに、ただ不器用に頷いた。それを見ると彼女はまた、手を温める作業に戻った。
 今度は気付かれないように、その姿を視界の端にかすめながら、僕は心の中で彼女に呼びかける。
 ねえ。
 どうやら自分で思っていたよりも、僕はずっと君のことが好きみたいだ。
デス種
 気が付くと声が出ていた。
 名前を呼ばれて、こちらを見た彼女に僕は再び、
「なんでもない」
 今度こそ彼女は、心底呆れたという顔をしてみせた。