2005-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『都会(まち)のトム&ソーヤ3 いつになったら作戦(ミッション)終了?』(はやみねかおる/講談社 YA!ENTERTAINMENT)

いまさらだが、このシリーズの良いところは、いかにもな天才美形金持ちの息子に設定されている創也にキャラ負けしないように、主人公にもちゃんと特殊技能を与えているところにあると思う。はやみねかおるは、記述者である主人公を「普通の」子供にしてしま…

『魔法の用心棒ミオ! 大迷惑! ソロモンの秘法回収計画』(あらいりゅうじ/電撃文庫)

ライトノベルというのは、つくづく流行り廃りが激しい分野なのだなあ、と改めて感じた。97年の作品なんだが、既に「ああ、昔はこういうのあったっけ」感がバリバリ。ハートマークとか台詞の語尾が無意味にカタカナだとか、正直、今読むとしんどすぎる(当時…

『孤島パズル』(有栖川有栖/東京創元社)

基本的に、体に悪いけど味の濃い駄菓子のようなミステリを好む(多少アンフェアでもサプライズが大きい方がいい)タチなので、正確に評価出来ているとは思わないが、少なくとも『月光ゲーム』よりこちらの方が好きだ、ということは言わせてもらおう。 大抵の…

『宇宙のみなもとの滝』(山口泉/新潮社)

ファンタジイ! いや、確かに紛れもないファンタジーではあるんだが、ファンタジーノベル大賞の選評で何人かの選考委員が使っている「正統派のファンタジー」という表現にはさすがに違和感が。大賞の『後宮小説』との比較で言えば確かにそうなんだろうが、こ…

『きみよわすれないで』(篠原一/河出書房新社)

あー、なんだ。いま俺が本当に何も考えずに素直に小説を書いたら、たぶん、分量はこれの五分の一で、内容はこれを十分の一に希釈したようなものになるんだろうなあ、という感じ。嫌なもの見ちゃったなあ。 社会からの疎外感を描くこと自体は、全然悪くない。…

『神様ゲーム』(麻耶雄嵩/講談社ミステリーランド)

これはきた。ガツンときた。世界と自分自身に対しての、厨房のような悪意と絶望に満ち満ちた麻耶雄嵩が帰ってきた。これだけでネタバレになるかもしれないが、作者のとある作品をジュブナイル(風味)にしたような印象。 島田荘司の『透明人間の納屋』は、作…

『世の終わりのための五重奏』(山口泉/河出書房新社)

若干、「俺の嫌いな山口泉」になっている。無駄に複雑な構成とかは大好きなんだけどなあ。なんでこんなに露骨な形で、社会批判をやってしまうのか。「吹雪の星の子供たち」では、極めて自然にストーリーの中でそれを処理できていたのに。作中にやたらと出て…

『サマー/タイム/トラベラー2』(新城カズマ/ハヤカワ文庫)

完結。 大筋の展開は、予想通り。というか予告通り。しかし、それをあまり悲劇として描いていない点に注目。注目したからといってどうなるものでものないが。 章の間に挟まれる地図の意味が、読み終えてから漸く分かった。ような気がする。つまり、一番最後…

『ゲッベルスの贈り物』(藤岡真/東京創元社)

とりあえず、タイトルのインパクトが凄い。 『ギブソン』よりも青臭い。だがそれがいい。他の要素の評価が全く一緒で、熟練度にだけ差のある二つの作品があったら、俺は間違いなく未熟な方を選ぶ。 CG一般についての大嘘っぱち描写については目をつぶる。9…

機動戦士ガンダムSEED DESTINY 第40話

俺の友人が何故かアカツキに大爆笑の回 レイ「優しすぎる、お前は」 その後に「それは弱さだ」と続くにしても、腐女子殺しな台詞ですな。いまさらだが、シンとレイが同室であることに激しい違和感を覚えた。どちらもザフトレッドなんだから、個室くらい与え…

『死神の精度』(伊坂幸太郎/文藝春秋)

表題作のラストの展開を見て、この作者は本当に「あらゆる問題は、それについてどうでもいいと思ってる人間が対処する方が絶対にうまくいく」と信じているのだなとつくづく実感した。作品と作者を同一視するのは危険だと知りつつも。 主人公が音楽ならなんで…

『魔王城殺人事件』(歌野晶午/講談社ミステリーランド)

読んだような読んでないような。 と、図書館で迷った挙句に借りた。 案の定、以前に読んだことがあった。 ミステリーランドって、なんだかんだ言って「小学校5(6)年生の『僕』」が「仲間」と共に「怪しいウワサ(不思議な事件)」の真相を探る、という形…

『吹雪の星の子どもたち』(山口泉/径書房)

多分、著者の最初の本。 新城カズマの気持ちが、やっと分かった。これなら納得する。これを書く人が、ああいうものを書くようになってしまうのか。月日とはつくづく残酷なものだ。 ファンタジー。ボーイがガールにジャストミートですよ。87年の作品なのだが…

『妖盗S79号』(泡坂妻夫/文春文庫)

個人的体験から言わせてもらうと、「湖底のまつり」を読んだ後だとより驚ける。偶然の産物ではあるが。最終話は亜愛一郎シリーズと同様、全員大集合だったが、こちらは話数の関係で大した人数でなかったのが、少し残念。

『ギブソン』(藤岡真/東京創元社 ミステリフロンティア)

序盤は、作者が五十過ぎてるだけあって、出てくる単語が「引き篭もり」だの「ストーカー」だの「FF(ファイナルファンタジー)(原文ママ)」だの、つい中指をそっと立てて「ジジイめ」と罵倒したくなるような直球の羅列で、読むのが非情に苦痛だった。い…

『永遠の春」(山口泉/河出書房新社)

つまらなくはないが、まだ新城カズマがこの作家を好きな理由がわからない。最初っから最後までセックス、というか生殖についての話。終章で、急激に感動系の展開になるのはいかがなものか。 「二十一星三十二郎」という名前には、文句なしに百二十点を付ける…

『QED 六歌仙の暗号』(高田崇史/講談社ノベルス)

トンデモ歴史ミステリ。シリーズ二作目。でも、これは良いトンデモだと思う。 歴史の問題と殺人事件が完全に乖離していた前作に比べると、今回は二つが密接に関連している。多少、露骨すぎるかもしれない。個人的には、そのおかげで伝奇テイストが付いて嬉し…

『湖底のまつり』(泡坂妻夫/創元推理文庫)

異常にふわふわした性描写に苦笑してしまったが、それすらも伏線だった。すげえ。

『ホテル・アウシュビッツ……世界と人間の現代についての七つの物語』(山口泉/河出書房新社)

短編集。 新城カズマの小説に作者の名前が出ていたので読んでみた。初出が八十四年から九十七年まで、長いスパンで作品が収録されているのだが、比較的に古い年代のもの方が楽しめた。新しめの作品は、どれも社会に対する問題意識が露骨すぎて。

『煙の殺意」(泡坂妻夫/講談社)

短編集。 これが、俺が生まれる前に出た本だというのが驚き。ミステリ的な部分だけでなく、文体のセンスも尋常でない。本格ミステリ冬の時代なんて、本当にあったのか? このくらいの時代の小説にありがちな、セックス中心の話があまりなくて良かった。やっ…

『大沢さんに好かれたい。』(桑島由一/角川スニーカー文庫)

作者のバランス感覚の良さは多分、(昔はともかく現在は)オタク文化についての情報収集をしていないところにその理由があるのではないか。いや、今でも毎週末には秋葉可通いを欠かさないような生活を行っている可能性だってもちろんあるのだが、少なくとも…

『続巷説百物語』(京極夏彦/角川書店)

シリーズ二作目。前作に比べると、各短編の間の結びつきが強く、長編小説に近くなっている。くらいしか言うことがない。このシリーズは、ソツが無さ過ぎる気がしないでもない。ちょっとくらいは過剰なところがあった方が愛着が増すのだが。 そうか。山岡百介…

機動戦士ガンダムSEED DESTINY 第39話

ストフリというかキラ無敵の回 もう慣れた ケミストリー。二回目にして「別にいいじゃん」という気になった。個人的に、SEEDシリーズにテーマらしきものがあるとすれば「それなりに緊迫した世界情勢の中で、ミニマムな恋愛を価値観の絶対的な基準に置い…

『太陽の簒奪者』(野尻抱介/早川書房)

SF、と言えば当然「シャイニング・フォース」の略。というような俺のような人間でも楽しめた。説明の無い単語は、全てマクガフィンだと思って読んだが。 ・よくわからんのだが「用語が多少分からないアホでも、ちゃんと飽きずに最後まで読める」というのは…

『工学部・水柿助教授の日々』(森博嗣/幻冬舎)

まず最初に言っておきたいのは、森博嗣はいい加減に本格ミステリに対する「本質的なツッコミ」をやめたほうがいい、ということだ。最初こそ面白みがあったが、こうまで方々で繰り返されると、俗っぽさすら臭ってくる。基本的にM気質が多いミステリ関係者(…

『蟲と眼球とテディベア』(日日日/MF文庫J)

日日日の本についての感想は、難点だけを書くことにしました。だって羨ましいじゃん! ああ、賞は要らないからお金ほしい(率直、そして切実)。 「ちーちゃん」「先輩」と比べると、変な表現(西尾維新がよくやる、意図的な誤用とは全く違う)は少なくなっ…

『大東京三十五区 亡都七事件』(物集高音/祥伝社)

三部作、完結。いつから三部作ってことになってたんだ。 てっきり、二作目の感じからすると延々とシリーズを重ねる形式になったものと思っていたが、あっさり完結してしまった。しかも、特にシリーズ全体を貫く真相というようなものもなく。 今回収録された…

『紅楼夢の殺人』(芦辺拓/文藝春秋 本格ミステリ・マスターズ)

ミステリの人達にさんざん褒められている作品らしいので、たぶん他に誰も書いていないようなことだけを箇条書き。 ・作中で「美少女」という単語が頻出して、見るたびに目が一瞬止まってしまう。非オタの人間は何の屈託もなくこういう単語を使えるのだと、分…

『クドリャフカの順番』(米澤穂信/角川書店)

古典部シリーズ三作目。 どうしたことだ。角川スニーカーからハードカバーになった途端、急激に千反田が萌えキャラに。今回は視点人物が切り替わりながら、四人の部員それぞれの一人称で書かれているので特にそう見えるのかも。学園祭の三日間という比較的短…

『樹上のゆりかご』(荻原規子/理論社)

ぐわー! また続編ものだ! ここ最近の遭遇率は、呪われているとしか思えない。繰り返しますが、カバーにあらすじを! まあ独立した話にもなっているから読めなくもなかったが。 思うさま書くと、色々と汚い言葉が飛び出しそうだがそこはカット。カットした…