『きみよわすれないで』(篠原一/河出書房新社)

 あー、なんだ。いま俺が本当に何も考えずに素直に小説を書いたら、たぶん、分量はこれの五分の一で、内容はこれを十分の一に希釈したようなものになるんだろうなあ、という感じ。嫌なもの見ちゃったなあ。
 社会からの疎外感を描くこと自体は、全然悪くない。ただ、この「自意識」の三文字が全ての行間に刻印されているかのような文体に、胃がもたれただけ。読んでないが『蹴りたい背中』ってのも、こんな感じなんだろうか。「私が排除されるのは私が『特別』な人間だからなのだわ!」という妄想を一度たりともも抱いたことのない健全な人間には全く共感できないが、それを実際に口に出す人間とは絶対に顔を合わせたくない。
 二つの年代の話を同時に進行させることにより、ソフトやおい、年の差へテロカップル、両方が楽しめるようになってます。お得!