『死神の精度』(伊坂幸太郎/文藝春秋)

 表題作のラストの展開を見て、この作者は本当に「あらゆる問題は、それについてどうでもいいと思ってる人間が対処する方が絶対にうまくいく」と信じているのだなとつくづく実感した。作品と作者を同一視するのは危険だと知りつつも。
 主人公が音楽ならなんでも好きと言ってはいるが、作中で言及されるのは精々クラシック、ロック、ジャズとか。サブカル系の人って、妙に自分は多角的な人間だと主張したがるけど、軽々しく「なんでも」とか言うのは、いくらなんでも傲慢過ぎる。『ハッピーマテリアル』でも聞いて汚染されるがいい。
 例によって他作品とのリンクがあった。しかしこの作者の場合、リンクというよりもあからさまな「サービス!」という感じで、そのキャラクターが登場する必然性が毎回殆ど無いと言っていい。どのくらい無いかというと、正直「ブギーポップ」シリーズの方がマシなレベル。まあ、サービスなだけあって、ファンなら嬉しいとは思うが。俺も嬉しかった。