『工学部・水柿助教授の日々』(森博嗣/幻冬舎)

 まず最初に言っておきたいのは、森博嗣はいい加減に本格ミステリに対する「本質的なツッコミ」をやめたほうがいい、ということだ。最初こそ面白みがあったが、こうまで方々で繰り返されると、俗っぽさすら臭ってくる。基本的にM気質が多いミステリ関係者(どういうわけか、ミステリ業界外部からの批判に対して無条件に賛同する傾向がある。これはネット上に多く見られる、オタクによるオタク叩きと似ている。要は、うしろめたさの問題なのか。「私は、ちゃんと『外』を認識してますよ!」というポーズ? 死ねばいいのに)ならともかく、一般の読者はそろそろ呆れてるぞ。
 で、その上で言わせてもらいますが、最近読んだ森作品では一番面白かった。少なくとも「四季」よりは面白かった。間違いなく少数派だろうが。「ミステリじゃない!」という批判は、この作品に関しては完全に的外れ。作者の思う壺、とかそういうことではなくて、(仮に)ミステリでなくても面白いからいいんだよ。