『クドリャフカの順番』(米澤穂信/角川書店)

 古典部シリーズ三作目。
どうしたことだ。角川スニーカーからハードカバーになった途端、急激に千反田が萌えキャラに。今回は視点人物が切り替わりながら、四人の部員それぞれの一人称で書かれているので特にそう見えるのかも。学園祭の三日間という比較的短い期間の話なので、人物の細かいリアクションも多いし。意識してキャッチーな要素を増やしてるのか。
 自身のアイデンティティをガンガン揺さぶられていた前作に比べると、今回は主人公がやや「絶対的な探偵」寄りに描かれていたのが残念。その分、他の三人が深く深く悩んでいるからバランスが取れていると見るべきか。「僕(私)って何だろう?」みたいなテーマを描くのに、絶叫と象徴に満ちた精神世界なんか別に必要ないんだという、ごく当たり前の事実を再確認。
 ミステリの落としどころとしては順当。真相が語られた後の苦さこそが真骨頂。いつものパターンなんだが、これを露悪的にではなく出来る作者はやはり貴重な存在。