『双頭の悪魔』(有栖川有栖/東京創元社)

 シリーズ三作目。
 今回は、章ごとに(必ずしも交互ではない)アリスとマリア、二人の語り手が入れ替わる形式になっている。慣れてないせいかもしれないが、マリアの語りの自意識過剰ぶりには大変イライラさせられた。≪犯人が食事をしている(中略)教えてよ。あなたの舌の上で、どんな味がしている?≫ こいつ、いやな女だなあああああ。
 アリスはアリスで、江神さんに電話した時に、たまたまマリアがその近くにいなかっただけで「どうして僕に彼女の声を聞かせてくれないんですか?」とかストーカーみたいなこと言い出すし。大丈夫かお前。かと思えば≪江神さん以上に僕が信頼できる人はいない≫などの子犬発言も相変わらず。いまさら気付いたが、地の文でアリスは望月と織田を呼び捨てにしているが、江神さんだけはちゃんと「江神さん」。こればっかりは、いくらなんでも不自然じゃないか。おもしろいから別にいいけど。
 あ? ミステリーとして? 最高だったよ。