『かえってきた、ぺとぺとさん1 フーコの空』

『かえってきた、ぺとぺとさん2 まっくらやみのピィ』

木村航ファミ通文庫

 思えば、これも報われないシリーズだった。単なるキャラクター先行の萌えハーレム系小説を装いつつ、影のテーマが多数仕込まれていた一作目は、殆どの読者からは「萌える」「萌えない」の判断だけで処理されてしまい、大手の書評サイトでは「これは、物語ではなくて、このほのぼのした雰囲気を楽しむための小説なんだろうなあ」みたいなことまで書かれる始末。二作目には(本編もそうだが、特にあとがき)、そういったクズのような反応に対する怨念が隠しようもなく滲み出ていた。そして、本作。二冊かけて一つのまとまったエピソードを語る丁寧さ。前二作と比べると、やや露骨なシリアス&アクション展開。群集劇的な性格を強くして、各キャラクターの掘り下げもばっちり。「これなら文句ねえだろ!」という作者の叫びが聞こえてきそう。これでもまだ分かってもらえなかったら、作者はちゃぶ台引っくり返してもいいと思う。
 秋山瑞人の『ミナミノミナミノ』と同じような経緯(編集者「アニメやるんで、それに合わせて売るために同系統の作品お願いしますわ」)で書かれたように見える(念のために言っておくと、執筆の経緯はともかく『ミナミノミナミノ』は良作です)ことや、よりによってマジキューなんかで連載させられていることから、作者が腐っているのではないかと勝手に心配していたが、全くの杞憂だったので安心した。地力のある作家って大好き。
 上で「単なる萌えじゃねえ」と主張しておきながらなんだが、色々萌えさせてもらった。特に守口ジェレミー。「普段はどうしようもなく変人だが実は……」的なキャラクターには本当に弱い(『E.Gコンバット』のペスカトーレとか)。こういうキャラクターの場合、日常における変態描写が本格的であればあるほど魅力が増すのだが、どうもその辺を突っ込んで書くことを尻ごみする作家が多い気がする。