『我が聖域に開け扉(上)』

『   〃    (下)』(秋田禎信富士見ファンタジア文庫


 いまさらながら、オーフェン本編最終巻を。


 ハーティア。何はなくともまずハーティア。いきなり何の伏線もなくアザリーに「チャイルドマン教室の三強」にされてるハーティア。コルゴンとの絡みが大層萌えることであるよハーティア。


 下巻の、妙に明るすぎる表紙や殺伐さが極まってる感じの口絵から、これはさてはイデが発動するのかと期待したが、そんな面白いラストではなかった。ちょっと残念。アンチクライマックスというほどではないが、比較的静かな終わり方。この作品で馬鹿みたいにテンション上げられても困るんだが。いや、もしかしたら無謀編はそうなってるのかもしれないけど。


 最後まで、元チャイルドマン教室生以外のレギュラー(ぶっちゃけクリーオウとマジク)の扱いに困っていた印象が強い。これは二人がほとんど戦力にならない一般人であることとは無関係で、オーフェンにとっての黄金時代は間違いなく牙の塔にいた頃なわけで、その記憶を超えるだけの繋がりをクリーオウ達と築くことが出来るものだろうか? という疑問を読者以上に作者が懐き続けていたことが、作品に直に表れていたのでは。そして、その自問の結果がこの最終巻なのではないだろうか、とか。そう考えると、なかなかに悪くない締めだったのかもしれない。


 それにしても、還らざる黄金時代崩壊回顧後始末系の話って実はこっそり支持者が多いジャンル(?)な気がする。例えば『ベルセルク』とか。確かに人の心を揺さぶりやすいモチーフではある。というか個人的にツボだ。