『狗狼伝承 天涯少女・シノ』(新城カズマ/富士見ファンタジア文庫)

 帯のコピーは「伝説完結!」。『封仙娘娘』と合わせてるんでしょうか。最近の富士見自体がそうなってるのかもしれないけど、今月の新刊の帯は変なのが多かったです。「あかほりを超えた漢」なんてのまで。気にはなるけど同時に正気を疑います。


 介錯の絵が変わりすぎて、平積みになってても一瞬認識できませんでした。普通に描き続けていてもこうは変わらないだろう、というぐらいの急変化。意識的な路線変更なんでしょうか。いや、イラストの話は別にいいんだ。誰がどう気を使ったのか知りませんが、肝心なシーンには挿絵付いてないし。
 まさか、馬鹿正直に前巻終了の直後の時点から物語を開始するとは思いませんでした。派手な最終決戦的なものは前巻で既に終わっていたようで、今回は全体的に静かなトーンのまま進行。タイトルの割には詩乃があまり活躍せず、やはり周防中心の物語になっていたのだけが少々不満。今まで散々、損な役回りばかり引き受けてきたような印象があったので、最後にそれが報われるものと思っていたんですが。いや、母親とのエピソードだけで十分報われているとも言えるか。何はともあれ、今まで読んでて良かったと素直に言えます。
 あとがきで作者も仄めかしている『サマー/タイム/トラベラー』とのリンクですが、正直把握しかねるところがあります。共に辺里市を舞台にしているのは分かりますが、完全に同一の世界観で展開しているのか、それともパラレルワールド的なものなのか。それよりも、この巻でより顕著になったテーマ的な重複の方が印象的です。いっそ姉妹編、と言い切ってしまってもいいのでは。
 あとがきによると(よらなくても知ってますが)、これが作者にとって初めてのシリーズ作品完結ということになるそうです。次に完結する可能性が高いのは、多分『ジェスターズ・ギャラクシー』あたりなんでしょうが、個人的には富士ミスの『浪漫探偵』をもっと頑張って欲しいところ。富士見で書けないんならいっそ講談社というかファウストとかに拾って、はもらえないか。太田の好みとは真逆だろうし。