『花物語(上・中・下)』(吉屋信子/国書刊行会)

 読む前に「少女小説」に抱いていたイメージ通りの内容。安心安心。殆どの章は、少女達のエス的な関係の形成から崩壊までを描いている。そうでないものも、悲劇的な結末が多い。現代の薄ぬるいフィクションに慣らされた身には、どんだけ美しかろうが三十本以上のバッドエンドを連続で読まされるという体験は、なかなかに苦しいものがあった。ラスト一つ前の「心の花」が、主人公がどん底の状況から甦るタイプのカタルシス溢れるストーリーだったので、ハッピーエンドの有り難みが身に染みた。二度と、ハッピーエンドを馬鹿にしたりしません。
 関係の崩壊の理由が、序盤は親の決めた結婚や病気による死別という、外部からの要因によるものが多くて、わりと分かりやすく悲劇悲劇してるのだが、章が進むと片割れの裏切り(勝手に「女」あるいは「大人」になってしまう)などが絡む後味が悪いものが出てくる。まあ、現実においても、こういう関係の最大の障害となるのは、実はその手の問題なのかもしれない。ゴメン、適当なこと言った。
 中巻に収められている「釣鐘草」の章には驚かされた。他のジャンル(ミステリ)でなら大して珍しくもないことなのだが、大正時代の少女小説でこういうことがやられているのを見ると、妙にうれしくなってしまう。変態だろうか。