『僕たちの終末』(機本伸司/角川春樹事務所)

 未読の人にまず言っておきたいのは、表紙は詐欺だ、ということ。イラスト描いたD・Kの脳内ではこんな感じなのかもしれないが、ちょっとイメージ違いすぎ。タイトルも、間違ってはいないんだが、微妙にズレた印象を与えそうな気が。俺は実際に読むまではセカイ系かと思ってた。
 太陽の異常のせいで近い将来人類が滅びそうなので、宇宙船を作って太陽系を脱出しようという話。この人の作品は、小松左京賞受賞作の『神様のパズル』しか読んでいなかったのだが、そこでテーマになった「宇宙の作り方」に比べると、今回の「宇宙船の作り方」は圧倒的に分かりやすい。その分陳腐になりそうなものだが、そんなことは全然なく、先行作品(とりあえず『オネアミス』ぐらいしか思いつかないが)との差別化はちゃんと図られているので安心していい。基本的に民間のプロジェクトとして宇宙船が建造されるという設定とか。
 好人物ばかりが登場する中で、唯一の例外である主人公(一応、天文学者としては有能ということになってはいるが、それ以外では明らかに駄目人間)の成長こそが、この作品の真の核。成長と言い切ってしまうと語弊があるので少し詳しく言うと、あらゆるものから逃げようとしていたら、その過程でいつのまにか自分が別に逃げなくても良くなっていたことに気付いた、というか。少なくとも、俺のような停滞してる人間が読んで泣ける本であることは間違いがない。ネガティブな意味ではなく、むしろ素直に前向きな気持ちになれた。
 おお、恥ずかしいことを書いてるぞ俺。しかし、こういう手続きも時には必要だろう。