『ロミオとロミオは永遠に』(恩田陸/ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

 フィクションの度合いが他の恩田作品と比べると極端に強いので、却っていつも感じるような問題点(無自覚な選民思想とか)が全く気にならず読み易かった。その代償として文章が垢抜けないものになっている(「敢えてそうしているのだ」というのは言い訳でしかない)のは気になったが、概ね許容範囲内だと言える。チョイスにやや偏りがあるものの、二十世紀、というよりは昭和ネタのオンパレードは、作者より一回り以上下の人間でも楽しめる。
 というのが、読んでいる最中の評価だったのだが。
 何だあのラストは。
 ハードSFってわけでもあるまいしそんなに目くじら立てんなよ、とでも言うつもりだろうか。しかし、これはSFとかミステリとか、そういう限定的なジャンルについての問題ではなく、小説一般のルールを逸脱しているようにさえ思われるのだが。正直、作家としての誠意を疑う。
 でもよく考えてみると、最近の恩田陸の連載もののラストは大なり小なり、みんな投げ出しエンドだ。何で、この作品だけがこんなに許せないんだろう。分量の問題(「これだけのページを使っておいて!」)だろうか。