『タクティカル・ジャッジメント 逆転のトリック・スター!』(師走トオル/富士見ミステリー文庫)

 サイコロックもカットインもない、どこまでも地味地味な『逆転裁判』。以上。


 いや、本当にそうとしか言い様がないんだってば! 噂には聞いていたが、ここまでそのまんまだと思わなかった。パクっている(かどうかは知らないが、とりあえず似てしまっているのは事実)こと自体はどうだっていい。だが、パクるならもっと上手くパクれなかったのだろうか。キャラクターが地味、事件も地味、設定(法律)も地味では、ライトノベルとして立つ瀬がないではないか。それで別に本格ミステリになっているというわけでもないし。いっそ、裁判をすることで悪の秘密結社を追い詰めるような派手さがあったっていいのに。他の誰が許さなくても、俺は許す。そのくらいしなければ『逆転裁判』のあの「見ているだけで血の温度が2度上がる」演出には敵わない、という事実に気付いて欲しい。メディアは違えど、同種のテーマを扱った後発の作品なんだから、独自性を出すためにそれなりの工夫は施してしかるべき。
 しかし、読んでいて不快感がほとんどなかったのもまた事実。クセのない文章っていいもんですね。