『眠り姫』(貴子潤一郎/富士見ファンタジア文庫)

 ライトノベルには珍しいノンシリーズの短編集、と聞いて興味を持っていたところ、古本屋で見つけたので購入。どの収録作品も少なくとも、ライトノベルで且つ短編小説という要件は満たしている。それだけですでに、大したものだと感心してしまう。この先もっと、こうした作家なり作品が増えて欲しいものだが、難しいんだろうなあ。シリーズ化できなきゃ売れ行きが安定しないわけだし。
 別に、高校時代に図書室に入り浸ったわけでもないのに、三作目の『さよなら、アーカイブ』に撃沈。とりあえず「実在しない架空の本で読書感想文を書く」というところで、心をくすぐられなければ嘘だと思う。正直、結末はかなりベッタベタだったが、それを帳消しにするぐらいの素晴らしい導入ではないだろうか。終わりが良くなくても、良いものは良い。口絵の松田さん(眼鏡の似合う司書さん)に騙されたわけではない。