『美亜へ贈る真珠 短編傑作選〈ロマンチック篇〉』(梶尾真治/ハヤカワ文庫)

 ネット上の『サマー/タイム/トラベラー』の感想の中に「タイムスリップで青春と言えば、そりゃあ何と言っても梶尾真治」というような発言が多数あったので「梶尾作品なんて『怒りのザーメン』しか読んだことねえよ!(嘘)」と半ば逆ギレしながら読むことにした。
 感動なのか、と言われればもちろん感動系なんだろうが、いかにも「感動しろ感動しろさもなければ死ね死んでしまえ」と言わんばかりの盛り上げ方には、少々辟易。『エマノン』とかでは、もうちょっとサラっと流してた気がするのだが。作中でも、一応本人にその自覚があるものとして書いてはいるが、男性キャラクターの粘着質なところもつらい。パートナーの婚前交渉が判明したぐらいで心中を考えるような人物には、さすがに感情移入できません。まあ、多少は偏執的でないと、変な機械を発明したり研究に没頭したりしないから、話が転がらなくて困るんだろうが。
 しかし、それはそれとして、ちゃんと各作品に一つは仕掛けがあるのは嬉しい。特に表題作のものは一番の不意打ちだった。