『荒野の恋 第一部 catch the tail』(桜庭一樹/ファミ通文庫)

 ぐわー! 


 こんなのただの桜庭一樹じゃねえか! 


 面白いけど。


 今回はいつもの「桜庭一樹臭さ」が薄いから大丈夫だと勧められたので読んでみたが、思わず「ガセビアの沼」ばりに「嘘つき!」と叫びたくなった。この、女性性に対する極端にアンビバレンツな感情とか、なんだかんだ言って「男性」に全ての問題をおっかぶせてしまおうとするむちゃくちゃ安易な態度とか、一人で勝手に思い込んで「戦って」いるつもりになれる陶酔能力の高さが、桜庭一樹でなくてなんだと言うのか。ぺっ。面白いけどな。読みやすいし。キャラも立ってるし。青春だし。ミトメタクナイ、ミトメタクナーイ!


 一番の問題はそこで、桜庭一樹の作品を単にツマラナイと思ったことは実は殆どない(富士見ミステリーの弁護士ものは別。あれは作者にとっても不本意な作品らしいが)。ただ、大っ嫌いなだけ。誰か、巧みなカウンセリングで「桜庭一樹嫌い」と「よしながふみ嫌い」を治療してくれないものだろうか。どちらも作品自体のレベルの高さは認めているのに、どうしても否定せずにはいられない作家。まあどっかの太った女性評論家が言うには、男が抵抗なく読めるようなものは全然ダメ(超うろ覚え)らしいので、これはこれで無問題なのかも知れない。