トラスト・ミー・フォーエバー

「7361」
「なに」
「新しく作った口座の暗証番号」
「だからなに」
「なんか忘れそうだから、代わりに憶えといて。そんで、こっちが忘れた時に教えて」
「いや、そういうのってさすがにマズいんじゃ。いろいろと」
「いろいろって」
「犯罪とか」
「大丈夫、信じてるから」
「そんな無駄に重い信頼はいらねー」
「なに、いまさら裏切るつもり!」
「あのさ、そういう大袈裟なのは勘弁して」
「…………」
「今、ちょっと眠いし」
「…………」
「泣くなってば!」

『これで古典がよくわかる』(橋本治/ちくま文庫)

 古文と現国が一つの科目としてカウントされてなければ、センター試験が大変なことになっていたであろう人間にも気軽に読めました。古典が分かるようになったかどうかは知らね。むしろ同じ作者の『桃尻語訳枕草紙』とかが読みたくなりました。

『TO THE CASTLE  DISCO UNDER GROUND』(桑島由一/集英社スーパーダッシュ文庫)

 桑島由一の作品には、前半での馬鹿やって馬鹿やってというのを前フリというか踏み台にしてしまって終盤でシリアス展開狂い咲き、というパターンが多い(気がします)。この場合、主はもちろんシリアスで馬鹿の方は完全に従になっているんですが、このシリーズに限っては、そうでもないように見えます。ヘタしたら馬鹿の方がメインなんじゃないかってぐらい、前半のドタバタが読んでて楽しい。逆に「アクマを殺して平気なの?」的な説教部分の方に、取って付けたような印象を感じてしまうんですが。
 読む前に「何の必然性もなくファンタジー世界にディスコが出てくる」と言われて、またお前さんそんなこと言って俺をかつごうったってそうはいかねえよ、と江戸っ子っぽく(あ、「江戸っ娘」ってどう? どうかな? ねえ、どう思う?)元気に読んでたら、本当にカケラも必然性がなかった。面白いからいいけど(魔法の言葉!)。

××の×××に×××を×く××もない××の「××は××××」という××ってなあ、×××ないよなあ

 話題に詰まるとすぐにテーマを乳首に持っていくのってどうなの。最低? うん、最低ですね。最低の人生だ。しかし、あのスプートニクに乗せられて地球を何周かしたライカ犬の一生に比べれば、まだマシではある。マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ。あれ? 「ア」じゃなくて「ザ」だっけ? 
 というように、一度も見たことのない映画からの引用を軽々しく行ったりするのも、世間一般では最低な行為と見なされてるらしいので、これからはせいぜい気をつけることにします。


 この間、古本屋で小説版『デモンベイン』の最終巻のラスト数ページ(比較的ハッピーでない、燃える方のエンドが採用されてて軽い驚き)だけを立ち読みしたら、古橋秀之の書いた解説が載ってて、これのおかげで『デモンベイン』という作品が一体なんだったのかというのが、ようやく理解できました。腑に落ち過ぎて、思わず店内で「はた」と声を出すところだった。平均的な知性と常識を備えた人間には言わずもがなのことですが、誇張ですよー。いちいちこんな注釈めいたことを書かなきゃならねえんだからね。まったく面倒くさいね。

『BUSIN wizardry Alternative』(アトラス)

 三百円だったので、ついカッとなって買った。今は反省している。しかし後悔はしていない。そんな感じ。


 これがウィザードリィなのかというと、さすがにどうだろうと首を捻るし、かといってオリジナルのダンジョンRPGとしては地味過ぎる部分も多々あり(五種族、八職種。変なところで原作に忠実です。せめて外伝で追加された要素もフォローしてくれれば)、どうしても中途半端に見えてしまいます。三百円は安すぎる(『アンリミテッドサガ』の方が高いなんて!)とは思いますが、クリア後にそれ以上やりこむ気が起こらないのも確か。
 しかしシナリオ、というか設定は素晴らしい。仮にも『ウイザードリィ』の名を冠したRPGで、こんなウエットなシナリオをやってしまうなんて。怒る人は怒るだろうけど。そういえば、最近読んだあるミステリが(拡大に拡大を重ねた拡大解釈をすれば)似た設定だったのですが、やはり拒否反応の方が多かったようです。そんなに駄目かなあ。
 細かいところですが、ランダムジェネレート系のダンジョンは、ウイザードリィに限らず3DダンジョンRPG全般にそぐわないと思います。『BUSIN』では数回(階)分しか採用されてないのでまだマシですが、それをメインに据えてしまった『ウイザードリィエクス』なんて一体どんなことになってるのやら。他人事ながら心配です。

『シナオシ』(田代裕彦/富士見ミステリー文庫)

 『キリサキ』の姉妹編。


 『キリサキ』は、×××××(字数関係無し)だろうと思ってたら全然ハズレで、そこを一番に評価していた作品だったのですが、今回は×××××でした。うーん、ラノベでミステリをやろうとするとどうしてもそうなるか。といっても、解決が予想できたというわけではないし、重要なポイントがそこだけということもないので、全然問題無し。このペースを保ったまま、シリーズを続けていってもらいたいです。
 作者があとがきで、続編ではないですよ独立した物語として楽しめますよ、と繰り返し主張していて、確かにそのこと自体は間違ってはいないんですが、問題は『シナオシ』の後に『キリサキ』を読んだ場合どういうことになるのか、だと思うのですが。致命的なネタバレにはなってないけど、純粋に楽しみたければ素直に刊行順に読んだ方が良いのでは。

超人強度偽造問題

 ある人から二年ぶりくらいにメールが届いて、それはそれでかなり驚いた(内容も。そうか、海外にいるとニートという言葉を知らないのか)のですが、同時にそれとは別の最近連絡をとっていない人(達)のことを思い出しました。


 最後に電話で話した時、ブログ作ったら教えるという約束をしていたのですが、ブログを立ち上げた直後は、たかが日記ごときを「見てください!」とシャクティ(Vガン)ばりの明るさで宣言することがためらわれ、結局先送りにしてしまいました。そしてそのまま疎遠に。
 まあでも一応は約束だしなあ、アドレス教えてないはずの知人が読んでるのに約束した人が知らないってのもアレだし、せっかくだからこの機会に教えとくか。と、決意しかけたのですが、ちょっと待ってください。そして想像してみてください。
 半年以上音信不通だった相手からいきなりメールが届いて、その中身はと言えば時候の挨拶もそこそこに「見てください!」。
 自分だったら、すぐさまメールを削除して「ざまあみろ! 誰もお前の日記なんか読まねえよ!」と高笑いしますね。『クリスマステロル』からの引用ですが。
 1パケット分の文字しか送れない通信環境が全て悪いのです。もちろん全てなわけはないが、つい調子にのって書いた(森博嗣風。そうでもないか)。


 そんなわけなので、心あたりのある共通の知人H氏は、彼らにさりげなくこのブログのことを伝えておいてください。あくまでもさりげなく。バーのカウンターに座ってピスタチオの殻を剥きながら「最近、ちょっと興味深いブログを見つけてね……」くらいのさりげなさで。そして二人はそのまま夜の街へと消えて行ったのだった――。(続く)


 「続く」と言えば『エウレカ』だが、最近の突っ走り方はすごい。必殺設定語りが冴え渡ってます。デューイがどんなカッコで(というかどんな顔して)リフやってたのか、全く想像出来ません。